ロゴ九州工業大学次世代パワーエレクトロニクス研究センター

概要

ご挨拶

COP26グラスゴー合意で、地球温暖化による平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5℃に抑制するという目標が確認されました。今後10年で二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量を半分にまで削減しなければなりません。一部の人々の努力だけでは達成できない非常に高い目標です。
この目標の達成には3つの方向性が重要になります。経済活動のエネルギー効率向上(Efficiency)、エネルギーの電力化(Electrification)、そして電力システムの柔軟性(Flexibility)です。Efficiency、Electrification、Flexibility実現への努力は相乗効果を生み、温室効果ガスを削減します。
以上の3つの方向性を推進する上で、パワーエレクトロニクスとパワー半導体の技術は大きな役割を担っています。例えば、産業分野ではヒートポンプによる熱源の効率化、運輸分野では電動化の大幅な向上、さらに直流送電(HVDC)によるエネルギー伝送量をパイプラインによる天然ガスの発電レベルまで引き上げる必要があります。
一方、電力変換効率は原理限界である100%に近づくなど、パワーエレクトロニクスやパワー半導体の様々な技術指標(電力変換の高率化、装置の小型軽量化等)は、温室効果ガス削減との関連で位置づけを見直す必要があります。さらに調整力を含む電力市場の開放など、今後の環境変化により、想像もできなかった指標が新たに登場する可能性もあります。これまで、パワーエレクトロニクスはそれぞれの応用分野で素晴らしい成果を上げてきましたが、このような視点での検討や議論は十分ではありませんでした。
1973年にNewellが指摘したパワーエレクトロニクス技術に関するParochialism(分野指向が過度に強い状態)からの脱却*は、地球温暖化が確実に進行している今日、改めて必要とされています。本センターでは、温室効果ガス削減で必要なパワーエレクトロニクス技術、パワー半導体技術の研究開発を引き続き行うとともに、上記の視点から調査を行い公表していきます。

令和4年3月
生命体工学研究科 教授 大村一郎

*W. E. Newell,
“Power Electronics-Emerging from Limbo(パワーエレクトロニクス-迷走からの脱出)” PESC 73 Keynote

センターのミッション

技術開発

  1. 究極の省エネを目指した極限パワー半導体デバイスの開発
  2. 高い性能と量産性を兼ね備えた新しいタイプのシリコンパワーデバイスの研究を行っている。量産性の高いシリコンテクノロジーをベースとしながら、極限性能を実現する新しい概念を取り入れる事で、低損失、高スイッチング速度を実現し、さらに高電流密度化によりチップ面積を大幅に縮小する事を目指す。

  3. 超小型化を実現する集積化パワーエレクトロニクスの開発
  4. 3次元に積層・集積した次世代の超小型パワーシステムの実現をめざし、LSIやMEMSプロセスを駆使した超高密度3次元実装技術、高周波・高温動作パワーデバイスの開発とその高信頼化技術、排熱技術、回路・制御技術の研究を進めている。特に、高周波スイッチングの実現や高密度実装による発熱密度化に対する対策が重要課題であり、これらの課題解決に向けた研究を進めている。

  5. パワー半導体の故障原因に迫るリアルタイム・モニタリング技術の開発
  6. 次世代のパワーデバイスでは電流密度や内部電界が高くなり、構造等の複雑化が進むため、今までの評価方法では十分な信頼性の確保が非常に困難になってきている。リアルタイム・モニタリングは、故障のトリガとなる現象を時間及び空間的にミクロなレベルで観測する装置群である。パッケージの構造変化、電流や電磁界、温度等の分布の時間変化を高い空間分解能で取得することにより、故障に至るメカニズムを解明していく。

  7. パワーエレクトロニクス制御とデジタルネットワークとの融合
  8. 情報通信技術の発達とともにパワーデバイスのデジタル化、ネットワーク化が進み、更なるインテリジェント化、スマート化が進むと思われる。パワー半導体のゲートドライブ回路を、デジタル化、ネットワーク化の視点から先行研究する。デジタル回路を用いて監視・制御することでパワーデバイスの自体の性能向上や高速な保護を実現していく。

拠点化、人材育成、連携ロードマップ

  • パワー半導体材料、パワー半導体からパワーエレクトロニクス応用の総合的研究を推進できる世界的な研究拠点の形成
  • オープンラボ構想に基づく企業との成果共有型連携プロジェクトの推進
  • 企業の人材教育、リカレント教育、博士クラスの教育と企業へのキャリア・フロー確立
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