ロゴ九州工業大学次世代パワーエレクトロニクス研究センター

研究紹介

電源の究極の小型化を目指したpower-Supply on Chip(power SoC)の研究

炭酸ガス排出量の抑制やエネルギーの有効利用を狙いとして、化石燃料を燃やすエネルギーから電気エネルギーへの転換が積極的に進められており、電源の重要性が高まっている。電源の研究・開発トレンドは小型化であり、究極の小型電源としてSi基板上に電源を搭載するpower-SoC(図1(a))が注目を集めている。Power-SoCはEUのFP7(PowerSWIPE)やアメリカのエネルギー省のARP-E(Advanced Research Project-Energy)のプロジェクトに取り上げられ、活発に研究が進められ、MCU(Micro Controller Unit)への搭載が始まった。Power-SoCはシリコン基板上にMCUなどのデジタル回路とアナログ回路や電源に必要なパワーデバイス、インダクタ、コンデンサなどの各種パッシブ部品を1チップ上に高密度に搭載するところに特長がある。本研究では、3次元にこれらを積層・集積した次世代のpower-SoC(図1(b))の実現をめざし、LSIやMEMSプロセスを駆使した超高密度3次元実装技術、高周波・高温動作パワーデバイスの開発とその高信頼化技術、排熱技術、回路・制御技術の研究を進めている。特に、高周波スイッチングの実現や高密度実装による発熱蜜度化に対する対策が重要課題であり、これらの課題解決に向けた研究を進めている。


図1  (a) パワーSoC  (b) 3次元パワーSoC

次世代パワー半導体用ウェーハ品質評価技術

パワーデバイスは、ウェーハの表面から裏面までのバルク部全域を電気的動作領域とする。このため、パワーデバイス用のウェーハでは、欠陥や不純物の状態を反映したウェーハ内部のキャリア寿命の評価が必須となる。加えて、拡大するパワーデバイス製造の要求に答えるために、このキャリア寿命の評価を高速で行う必要が生じている。これらの要求を満たすためには、全く新しい原理に基づく高速度のキャリア寿命評価法を開発することが求められている。そこで発想を転換し、レーザビームの定常照射によって生成されるキャリアにもう一つのレーザビームを通し、その屈折角を計測する(図1)。位置の関数としての屈折角を測定し、その結果(図2)をキャリアの濃度分布に戻すことによって、拡散長を知ることができる新原理を発明した。屈折は高速で起こる現象であるから、高速測定が可能になる。現在、この屈折を利用した測定原理が実際の測定法技術として使えることが実証され、種々のウェーハのキャリア寿命測定を行いつつ、装置の光学系とデータ解析システムの改良を重ね、実用化への距離を縮めつつある。

 
図1 開発中のウェーハ品質評価装置

図2 YAGレーザ照射位置 z の関数としての屈折角(上)
YAGレーザ照射で生成される自由キャリアの濃度分布(下)

パワーモジュールのスクリーニング超小型電流センサアレイ検査装置開発

IGBTなどの高機能パワーデバイスはHEVや風力発電、鉄道輸送など各種産業分野に応用され、社会インフラの重要なキーコンポーネントとなってきている。高機能化に伴い信頼性確保が課題となっており、特に並列チップ間での電流集中による破壊の防止は安全確保の面からも重要である。本研究では非破壊で正確な電流バランスの高速測定が可能な革新的超小型電流センサ及びIGBT製造ライン向け検査装置の開発を行なった。
 16CHセンサアレイを組み込み、統計的な手法と基準信号との比較を用いたGO/NOGO判断基準により、判断が可能であることを実証した。本検査装置は信号取得から判断結果表示まで10秒以内で終わるため、製造ラインのスループットを落とさずに検査が可能である。
(平成24年度~平成26年度 戦略的基盤技術高度化支援事業)


高機能パワーデバイスの高信頼性検査装置

超小型電源が切り開く次世代電力ネットワークシステムの研究開発(注)

低炭素社会実現のために将来訪れる高度電力化社会では、多くのパワーエレクトロニクス機器が使用されるようになると考えられる。現に、パワーエレクトロニクス機器は約15年で1桁の高電力密度化が進んでおり、将来さらなる高電力密度化が要求されることが予測でき、集積化パワーエレクトロニクスシステムの研究開発は益々重要となってくる。また、ビッグデータ、クラウド時代の到来と共に情報通信機器の電力消費量は爆発的に増大し通信用パワーエレクトロニクス技術の高度化による高効率化と小型化が必須となってきている。本研究では、データセンターの給電方式として400V高電圧DC給電システムを指向した超小型電源の研究開発を行っている。高電力密度化に対しては現状の15倍程度の30W/ccクラスの超高電力密度変換器を目指している。現状、400V・1kW出力で効率97.5%・電力密度12W/ccを達成している。さらに、GaN, SiCの利用及び冷却部分の小型化により25W/cc程度の高電力密度電源の試作を行っており、今後、特性評価を行っていく。
 当該研究開発の成果を社会インフラへ展開することにより直流をベースとした次世代電力ネットワークが実現でき高度電力化社会に大きく貢献できると考える。

注:本件は、アジア成長研究所の成果に基づき九工大で継続して研究を行っている内容


高電力密度変換器

ワイヤレス電力伝送技術に関する研究

接続が不要で利便性がよく感電に対する危険性の少ない近接距離でのワイヤレス給電は携帯電話を始めとして多くの家電機器、携帯機器に導入されすでに社会に定着している。更には、絶縁に対する安全性への期待により電気自動車まで応用が議論されている。これらは主に数百kHzまでのスイッチング周波数と磁性体での磁気結合によるワイヤレス伝送であり、伝送距離は密着又は近接の距離である。一方使用する素子は、高速動作が期待されるワイドバンドギャップ素子の実用化が始まっており、これら高性能のワイドバンドギャップ素子の導入によってMHz帯と空芯コイルを用いた至近距離給電への可能性が広がり、ワイヤレス給電の応用範囲拡大への期待が高まっている。本研究では駆動素子として、今後更に製品化、高性能化が進むワイドバンドギャップ素子である窒化ガリウム素子を用い、MHz帯による伝送距離の拡大によるワイヤレス給電の優れた絶縁性、設置の自由度が大きい特徴を生かし、パワーエレクトロニクス分野におけるワイヤレス給電技術の応用を目指している。

ワイヤレス電力伝送技術に関する研究
絶縁材(50mmアクリル)を通して給電

ネガワットコスト低減に向けた高性能シリコンパワーデバイスに関する研究

高い性能と量産性を兼ね備えた新しいタイプのシリコンパワーデバイスの研究を行っている。量産性の高いシリコンテクノロジーをベースとしながら、極限性能を実現する新しい概念を取り入れる事で、低損失、高スイッチング速度を実現し、さらに高電流密度化によりチップ面積を大幅に縮小する事を目指す。

  
  次世代シリコンパワーデバイス:高性能シリコンIGBTおよび超高速PiNダイオード

パワー半導体の高信頼化を促進するリアルタイム・モニタリング技術

パワー半導体はチップ面積を縮小することで量産性を向上させ、省エネルギー製品の普及に伴う莫大な需要にこたえてきた。その一方でデバイス内部の電流密度や内部電界が高くなり、絶縁や配線構造等の複雑化が進み、今までの方法では十分な信頼性の確保が非常に困難になってきている。
 リアルタイム・モニタリングは、故障のトリガとなる現象を時間及び空間的にミクロなレベルで観測するツールである。すなわち、デバイスの内部の構造変化、電流や電磁界、温度等の分布の時間変化を高い空間分解能で取得するものであり、故障に至るメカニズムを可視化することを目的としている。例えば故障解析に代表される今までの分析では、故障が起きたデバイスを開封しスタティックに観察することにより故障要因を探るのに対し、リアルタイム・モニタリングでは、故障に至る前に故障を引き起こす可能性があるミクロな現象をダイナミックに時系列観測することが可能である。


図1.複合型リアルタイムモニタリングシステムとワイヤ接合部劣化の連続観察結果


図2.リアルタイム・モニタリングとリアルタイムシミュレーションの融合によるデバイス内部温度分布可視化システム

パワー半導体故障現象の高速・高分解能温度分布イメージング技術の研究

パワー半導体の耐量は、ホットスポットの発生により低下する。ホットスポットの発生しない設計を実現するために、実験等によりその発生メカニズムを解析し、高い耐量のパワー半導体実現に繋げる。
温度分布の高速な変化をリアルタイムで画像化可能なシステムを用い、故障のトリガとなる現象の解明を目的とし、センサとスキャン手段、パワーストレス回路、画像化演算手段等により構成されるシステムで、IGBT、MOSFETなどのパワー半導体サンプル素子による評価を行い、故障要因となる可能性のある高速な温度変化を可視化する技術を開発している。

高速赤外線カメラによる負荷短絡時におけるチップ表面温度分布観察
図1.高速赤外線カメラによる負荷短絡時におけるチップ表面温度分布観察

赤外線センサによる超高速・高空間分解温度モニタリング
図2.赤外線センサによる超高速・高空間分解温度モニタリング

パワーエレクトロニクス回路用キャパシタ評価方法の研究

インバータ等のパワーエレクトロニクス回路で使用される直流リンクコンデンサを評価する最も効果的な手法は、コンデンサが使用される実際の電力定格のインバータを用いて測定することである。本研究では三相インバータに搭載される直流リンクコンデンサの評価に適した回路を構成し、1/10の電力定格の小型インバータを用いて同等の測定を可能とする評価回路を開発した。この評価回路は ESRやキャパシタンスなど電気特性のモニタリング,電力損失の測定,加速劣化試験などに展開できる。

実リブル電流での評価を電力価格1/10のインバータで実現
実リブル電流での評価を電力価格1/10のインバータで実現

実リブル電流での評価を電力価格1/10のインバータで実現

フルスケール・パワーテストベッドの開発

省エネルギーに貢献するグリーン・エレクトロニクス研究開発を担うパワーエレクトロニクス機器普及・拡大のためには機器の小型化と信頼性向上が求められる。本研究では実動作電力負荷環境下におけるパワーエレクトロニクス機器の電力効率など総合評価可能なテストベッドを開発する。これは、実際の回路で発生する電流および電圧を再現することができるため、IGBTなどのスイッチング素子、キャパシタやインダクタなどを実際の動作する容量(~100 A ~10 kV)での性能評価を実現する。特に、大電力インバータなど次世代の機器に組み込まれる平滑用大容量キャパシタの損失評価について取り組んでいる。


図1 グリーン・エレクトロニクス研究開発


  図2 フルスケール・パワーテストベッド

特許公開リスト

公開番号登録日・公開日発明の名称発明者
特開2017-50989 平成29年3月9日 ワイヤレス電源供給装置及びこれを備えた高電圧素子駆動システム 市原文夫
大村一郎
特許第6004988号 平成28年9月16日 電力用半導体素子のゲート
制御装置
大村一郎
附田正則
三木大和
椋木 誠
高尾健志
吉沢大輔
特許第5846421号 平成27年12月4日 半導体回路の電流測定装置 大村一郎
加生裕也
平井秀敏
附田正則
特許第5804494号 平成27年9月11日 半導体装置及びその駆動方法 大村一郎
松本泰明
津田基裕
附田正則
特許第5721137号 平成27年4月3日 半導体装置の短絡保護装置 大村一郎
湯淺一史
谷村拓哉附田正則
特開2013-251338 平成25年12月12日 高電圧電力用半導体装置 大村一郎
瀬戸康太
附田正則
【国際公開番号】
WO 2013/180186 A1
2013年12月5日 高電圧絶縁ゲート型電力用
半導体装置
およびその製造方法
大村一郎
田中雅浩
附田正則
三木大和
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