概要
ご挨拶
次世代パワーエレクトロニクス研究センターは九州工業大学の基幹センターとして2012年に設立され、10年に渡り半導体材料やパワー半導体からパワーエレクトロニクス回路までを総合的に研究 ・ 開発してきました。近年は、『NZE by 2050を目指すパワーエレクトロニクスおよびパワー半導体技術』として、①極限性能パワー半導体デバイス、②電源の集積化、③リアルタイムモニタリング技術、④センシング技術、⑤パワエレ機器の小型・高効率化に関する研究を推進しています。
NZE by 2050 達成に向け、2030年のCO2排出量は2013年比で46%が目標となっていますが、2022年10月下旬に国連機関から発表された報告では、2030年の目標達成すら難しい状況です。このような状況下で、パワーエレクトロニクス技術の重要性は益々高くなってきます。NZE by 2050 達成のためには、これまで培ってきたパワーエレクトロニクスやパワー導体の技術を統合し、エネルギーマネージメントシステムへ展開し高効率・高信頼で柔軟なシステムを構築することが重要と考えています。複雑化するシステムにおいて構成の最適化、検出信号の管理・統括、 最適制御を実現するためにはこれまでの設計・制御技術だけでは困難です。本センターでは今後、モデルベースデザインやバーチャルプロトタイピング技術を駆使した新しいシステムの構築や設計技術の研究・開発を目指した活動を予定しています 。
センターのミッション
技術開発
- 究極の省エネを目指した極限パワー半導体デバイスの開発
- 超小型化を実現する集積化パワーエレクトロニクスの開発
- パワー半導体の故障原因に迫るリアルタイム・モニタリング技術の開発
- パワーエレクトロニクス制御とデジタルネットワークとの融合
高い性能と量産性を兼ね備えた新しいタイプのシリコンパワーデバイスの研究を行っている。量産性の高いシリコンテクノロジーをベースとしながら、極限性能を実現する新しい概念を取り入れる事で、低損失、高スイッチング速度を実現し、さらに高電流密度化によりチップ面積を大幅に縮小する事を目指す。
3次元に積層・集積した次世代の超小型パワーシステムの実現をめざし、LSIやMEMSプロセスを駆使した超高密度3次元実装技術、高周波・高温動作パワーデバイスの開発とその高信頼化技術、排熱技術、回路・制御技術の研究を進めている。特に、高周波スイッチングの実現や高密度実装による発熱密度化に対する対策が重要課題であり、これらの課題解決に向けた研究を進めている。
次世代のパワーデバイスでは電流密度や内部電界が高くなり、構造等の複雑化が進むため、今までの評価方法では十分な信頼性の確保が非常に困難になってきている。リアルタイム・モニタリングは、故障のトリガとなる現象を時間及び空間的にミクロなレベルで観測する装置群である。パッケージの構造変化、電流や電磁界、温度等の分布の時間変化を高い空間分解能で取得することにより、故障に至るメカニズムを解明していく。
情報通信技術の発達とともにパワーデバイスのデジタル化、ネットワーク化が進み、更なるインテリジェント化、スマート化が進むと思われる。パワー半導体のゲートドライブ回路を、デジタル化、ネットワーク化の視点から先行研究する。デジタル回路を用いて監視・制御することでパワーデバイスの自体の性能向上や高速な保護を実現していく。
拠点化、人材育成、連携ロードマップ
- パワー半導体材料、パワー半導体からパワーエレクトロニクス応用の総合的研究を推進できる世界的な研究拠点の形成
- オープンラボ構想に基づく企業との成果共有型連携プロジェクトの推進
- 企業の人材教育、リカレント教育、博士クラスの教育と企業へのキャリア・フロー確立